事の始まり

2/12
前へ
/27ページ
次へ
(うひゃ~…直らなんっ)  鏡に向かって、俺は朝から寝癖と格闘していた。  水で濡らしても、ドライヤーでやっても、どうも端のハネが気になる。 (この…クセ者が!)  ムキになって、くしでとかしても…容易に直るものじゃない。髪の質も、本人に似たか!? 「平(ヘイ)く~ん?早くご飯食べないと、学校に遅れちゃうよ?」  1階から、心配する声が聞こえる。 「今、行く!」  気が付けば、出掛ける時間になっていた。  俺は寝癖を諦めて、部屋を後にする。  1階のキッチンに行くと、少し長めの髪を1つに束ね、朝食の支度をしている俺のイトコ・源仲麻呂の姿があった。通称・源(ゲン)ちゃんと呼んでいる。  その源ちゃんの髪は…銀色っぽいような…日に当たるとキラキラ光って、パールっぽく見える色をしている。おばあちゃんがイギリス人で、隔世遺伝で髪の色に出たらしい。  俺の髪も、隔世遺伝してくれたらよかったのに…。  俺の髪は、一般の黒よりも少し茶色っぽいくらいで…。クセがつくと、なかなか言うことを聞いてくれない。  源ちゃんの髪が羨ましい。 「おはよう、源ちゃん」 「おはよう。もう7時50分だけど、大丈夫?」 「ちょっとヤバいかも…。あっ、この牛乳、もらうよ」  テーブルに置いてあった、牛乳入りの牛乳を手に取り、口に持っていくと… 「あ…それは…!」  と、慌てた様子で源ちゃんが振り返るが…。  源ちゃんの言葉を聞く前に、すでに口にしていた。  そして、数秒後…。 「ブー…!」  それを口から吐きだしていた…!  白い霧状のものが、テーブルの上に一気に広がった。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加