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その強くて優しい微笑みに、何度勇気をもらったか。
ついっと……当たり前のように、美月が石黒に笑いかけた。
いつもの事だ。いつもの光景……なのに。
石黒の心臓は、大きく波打った。
「石黒さん?」
美月が、不思議そうに呼びかける。
「まさか……」
無意識に押し込めていた、自分の想いに。
「嘘だろ……」
ようやく気づいた瞬間だった。
「そんな……いまさら」
石黒の苦悩の始まりは、土砂降りの雨が降る、なんちゃってサバイバルな夜だった。
「何をぶつぶつ言っておるのかね、石黒くん!具合でも悪い……そうか。お腹がすいたのだろう!私もだ!ちょっと待っててくれたまえ」
社長は、携帯を片手に立ち上がると、どこかへ消えてしまった。
恐怖の夜が始まる。
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