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「………」
私が暮らすアパートはワンルームで、無駄に大きいダブルベッドにローテーブル・ローソファーが部屋を埋めつくしてる。
私はベッドに、父はソファーに座り、そして父の後ろにはまだあどけなさの残る青年が立ってる。
ボーっと部屋の隅一点を見詰めてる。
「…こんなに狭かったか?」
「……だから無理だっていったでしょ?」
軽く父を睨みつつ悪あがきをしてみる。
「…まぁいい。時田 蓮君18才だ。」
「蓮君、娘の蓮見 瑞希。23才だ。ここは思ったより狭くて気を使うだろうけど、自分の家だと思って暮らしていいからね。」
ニッコリ笑い蓮を歓迎する口振りに苛っとし、キッと睨み
「父さん!ここ私が借りてるアパートなんだけど!!」
なんて言ってみても、父は聞く耳持たず。
「じゃ、仕事に行くから後は頼んだぞ。」
と言い、ジャケットの内ポケットから財布を出し、クレジットカードを取り出してテーブルに置いた。
「蓮君は着替え以外の荷物がないから、必要な物はこれで買いなさい。
何かあったらすぐに連絡してくるんだよ。」
と蓮に語りかける様に優しく話すと立ち上がった。
蓮は、
部屋の隅から視線を反らす事なく、また父の言葉にも全く反応せず、ただそこに居るだけだった。
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