友紀と光司(1)

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「勝手にレディの部屋に入らないでくれる?」 「レディ?仕事ほっぽって、カバン忘れて帰るアホの間違いだろうが」 光司はそう言ってヒョイとカバンを投げた。 「あ…」 友紀はその時初めて、自分が手ぶらで帰ってきたことに気付く。 「友紀の家、久しぶりに来たけど、変わってねぇなぁ」 光司がそう言ってドカっと座る。 「なに居座ってんのよ。用が済んだんなら帰りなさいよ」 友紀がカバンを抱きしめて睨む。 「忘れ物届けてくれた人にお礼くらい言えよな。残りの仕事まで片付けてきたんだぞ。茶の一杯でも出せ」 光司はそう言って、図々しくも学ランを脱いでその辺にほたりなげる。 「~~っ」 友紀は涼しい顔の光司としばし睨み合っていたが、バンっとカバンを乱暴に置くと、スッと立ち上がって部屋を出た。
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