◆高炉峰の雪いかならむ【ホン】★

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――― 漸く雪が貿易商人と工の待つ部屋の前までやってきました。 しかし、雪は間仕切りに使われている簾の陰に隠れたまま、一向に中へと入る気配がありません。 先に支度が遅れているからと詫びにきた小間使の娘が、「雪さま今夜はご機嫌斜めなようで…」とポロリと漏らしていったので、貿易商人と工は雪が機嫌が悪い事を知っておりました。 貿易商人はそんな事には慣れっこな様子でしたが、初めて炉峰に訪れた工は、店一番の待遇がどんなものかなどは知りません。 故に些かムッとしておりました。 美人だかなんだかしならないが、客を待たせるとは如何なものか、と。
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