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先に立って歩きだしてしまってから、シュンシャは、どこに行こうか聞いていないことに気づく。だからといって、今更振り返って『どこ行く?』と聞くのもバツが悪かったし、立ち止まってしまったりしたらせっかく引っかけた指がはずれてしまいそうな気がして、シュンシャはラナを引っ張りながら校内を進んで行った。
途中、賑やかなブースを通り抜けようとした時、何人かのクラスメートとすれちがう。
その度に『何?お前ら付き合ってんの?』と、冷やかしの声が飛んできた。
顔が赤くなってる気がしたから、シュンシャは、後ろをついてくるラナの顔を振り返って見ることはしないでおいた。
それから、迷惑そうな顔で「うるさいって」と適当にあしらいながらも、「違う」とだけは絶対に言わないでおいた。
ずんずん進んで人波を抜けると、自然とシュンシャの歩調はペースダウンして、いつのまにかラナが歩調を合わせ、隣に並んで歩いていた
会話はなかったけど、ゆっくり歩いていると、シュンシャにもようやく周りに目をやる余裕が出てくる。
女友達同士でお揃いの服…あれは確かAKSとかいう企画の衣装だ…を着ながらキャッキャしている女生徒達。
女装した男子生徒が、何かから逃げるかのように猛スピードで通り過ぎていったりもした。
それから、まるで結婚式の花婿と花嫁みたいな恰好で手を繋いで歩いている男女は…どこからどうみてもカップル。
それを眺め、じゃあ、俺とラナってどう見られてるのかな?と思う。
…引っかけただけの指みたいに中途半端な感じ?
クラスメートに冷やかされたりもしたけれど、実際、どうなんだろう?
…そんな風に見えるのかな?
いや、それよりも、
…自分はどう見られたいのかな?
そんな事を考えているうちにシュンシャはいつのまにか立ち止まっていたらしく「どうしたん?」というラナの声にハッとし、その拍子に指が外れてしまった。
『どうもしないって!』とあたふたしながらも、シュンシャは再びラナの手をとる。
今度はラナがあたふたしながら「やっぱ変、どうしたん?」なんて聞いてきたけど、シュンシャはやっぱり『どうもしないってば』と笑って答えただけだった。
そうなれたらいいのにな、なんて思ってる事は今はまだ口には出せないから、その代り、そう見えたらいいのになと思いながら、今度はしっかり、手を繋いで。
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お粗末様でした!
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