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「あの…」
しどろもどろになりながら、言葉を探す。
「俺は…バカだから上手く言えないんだけど…」
「斉藤さんとこれからも町を歩きたい…」
「えっ⁉」
ありきたりな言葉かもしれない。
今の自分の気持ちを込めた精一杯の言葉…
「東京で何があったとか関係なく…俺は…斉藤さんが好きです」
沈黙の時間が流れる…
「ありがとう…」
泣きそうな声で答えてくれた…
『フラれちゃったな…』
声のトーンがそう思わせた。
「………ごめん」
思わずそう言ってしまった。
「どうして謝るの…?」
何も答えられない…
「私も佐々木君と町を歩きたいよ…」
思ってもいなかった言葉が…
俺の思考を止めた。
頭が真っ白になり、思わず彼女を抱きしめていた。
「これからも俺の側にいてください…」
そう呟くと…
彼女は小さく頷いた。
そして…
「これからは、斉藤さんじゃなくて…佳江って呼んでね…」
その言葉が嬉しかった。
「じゃぁ…俺の事も陽介って…」
抱きしめた彼女の温もりを感じながら…
俺は幸せを噛み締めてた。
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