第三章 決意を胸に

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── そんなに時間は経っていないだろうが、この本を半分まで読み終えた。かなり集中していたから時間感覚が鈍っている。 「ふぁ……ん?」 欠伸を一つ洩らすと、何処からか視線を感じる。何やら前のほいから……って、アリシアか。 「どうした、アリシア? 俺の顔に何か付いてるか?」 「別に……物凄く集中してたから、眺めてただけ」 「そっか……っておかしいよな。別に集中してたからって眺めるか?」 「駄目……?」 そんな潤ませた上にその上目遣いは反則だろ……。ここで拒否したら泣いちゃいそうだな。 「いや、別に問題ないけど……」 それしか答える術がなかった。単純にこの子を悲しませたくなかったからだ。 「うん」 素っ気なく返事をすると、またしても俺を見つめ始めた。 俺はその視線を非常に気にしながら本に目を移した。 「……」 「……」 ……駄目だ、物凄くアリシアの視線が気になる。気になりすぎて本に集中出来ない……。
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