第三章 決意を胸に

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アリシアの視線をかいくぐる且つ、時間を夕飯まで潰せそうなこと……読書しか思い浮かばないな……。 でもそれはさっき断念したからな、もっと他に何か……。 ……あ、そうだ。もしかしたら明日から使うことになるかもしれない、この剣を磨いていようかな。 「アリシア、何か拭くものは無いか? これを磨きたいんだけど」 「布巾で良い?」 「ああ。ありがとう」 アリシアが差し出してきた真っ白い布巾を受け取り、それで剣を磨いた。 前々から思っていたんだが、不思議と馴染むんだよな、この剣。昔から身に付けていたような、そんな感じがする。 まぁ、気のせいだろうけどな。 刃、鍔、柄、最後に鞘を磨き終わると、真っ白だった布巾が若干薄汚れている。 「念入りに磨き過ぎたか」 「綺麗になったね」 「……あー、また見てたのか?」 「うん、ずっと」 窓から外を見てみるとさっきより薄暗くなっている。どうやら、磨きだしてから結構時間が経ったみたいだな。 「飽きなかったのか? そうやってずっと見ていて」 「不思議と飽きなかった」 まぁ、時間感覚は人それぞれだからな。もしかしたらアリシアにとっては短い時間に感じたのかもしれない。 「そろそろ夕飯を作るから、テーブルの上を片付けといて」 「ああ、分かった」 お腹も空いてきたし、丁度いいな。じいちゃんが絶賛するアリシアの料理に舌鼓を打つか。
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