13.大学時代

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 その後、佐藤君は話を変えて、相変わらずの話上手で、私を笑わせたり、驚かせたり、佐藤君と話していると、飽きることがなく、落ち込んでいることを忘れられた。  その晩、アオイちゃんと一緒に合コンへ向かう前、お化粧を直しにデパートのトイレに寄る。  入念にお化粧をするアオイちゃんの隣で、私は 敦史を「忘れろ」とばかり言われると、愚痴ではないけど話していた。 「でもさ~、人に忘れろーって言われて、忘れられるもんじゃないよねー」 「……」 「いいじゃない、想うのは自由だし! 無理して忘れることないんじゃない?」  鏡越しにあっけらかんと言ったアオイちゃんの言葉に、私の目から涙がこぼれ落ちる。 「カヨちゃーん、泣かない泣かない! せっかくのお化粧が台無しー」  私はティッシュで叩くように涙を拭った。みんなが「忘れろ」という……でも、忘れられずにいた。 『無理に忘れなくていい――』  その一言がずっと欲しかったんだ……。
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