10.コイ アイ

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 もう帰るだけの夜の電車で、敦史は手を繋ぎ私に寄り掛かる。 「帰ったら、学校に入学金払うの加世付き合ってよ」 「うん……」  敦史は微笑むと、目を閉じ、しばらくして寝息をたてはじめた。私は心地良い疲れを感じながら、車窓に映る姿をぼんやりと眺める。 『コイがアイに変わるんだ』  敦史の言葉が頭に浮かぶ。 『もっと深くもっと好きになる』  好き過ぎて、敦史になってしまいたいとさえ思う 私は目を閉じ、敦史と頭を寄せ合ったーー。  この時、私は心から幸せに満たされ、この先も敦史とずっと繋がっていられると信じていた。 嵐の前の静けさを、平和なまでに過ごしていたんだ……。
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