11.彼の闇

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 昨日までずっと一緒に居て、手を伸ばせば触れることが出来たのにーー今日は、敦史の声さえ聞けなくなるなんて。  繋がらない電話とメールを繰り返しながら、心も体も、削がれたピースを探すように、敦史を求めていた。  翌日、放課後に敦史のアパートへ行った。ドアノブに手を掛けると、ドアが開いた。  敦史が居るわけないのに、緊張しながら、中を見ると、人の気配はなく、あの日荒らされたままの状態だった。  でも、いつ敦史が帰ってくるかもしれない――私は散らかった部屋の片づけを始めた。
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