11.彼の闇

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 ひどいお酒の臭いに包まれ、派手な格好をした敦史のお母さんが現れた。 「あら、久しぶり」  一瞬にして敦史の顔と体が強張る。私は慌てて身なりを整えた。  キツイ香水の香りも漂わせ、ふらつきながら自分の部屋へ行くと、ベットに腰を掛けて、こちらを向いた。 「ねぇ、あっちゃん、足揉んでくれない?」 「よせ…」  それは、抵抗ではなく、警戒した声だった。 「なーに? 私が疲れた時は、いつも揉んでくれるじゃない」  敦史は全身を強張らせたまま、お母さんの前にひざまずくと、ふくらはぎを揉み始めた……それはまるで、旅行の時私にしてくれた様に。 「あ~気持ちいい」  お母さんが敦史の頭を撫でる。 「……やめろ」  敦史が小さく言う。でもお母さんは、敦史を愛おしむ様に撫で続けた。 「やめろって言ってんだろ!」  手を振り払われたお母さんが異様な眼差しを私に向けた。
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