390人が本棚に入れています
本棚に追加
ひどいお酒の臭いに包まれ、派手な格好をした敦史のお母さんが現れた。
「あら、久しぶり」
一瞬にして敦史の顔と体が強張る。私は慌てて身なりを整えた。
キツイ香水の香りも漂わせ、ふらつきながら自分の部屋へ行くと、ベットに腰を掛けて、こちらを向いた。
「ねぇ、あっちゃん、足揉んでくれない?」
「よせ…」
それは、抵抗ではなく、警戒した声だった。
「なーに? 私が疲れた時は、いつも揉んでくれるじゃない」
敦史は全身を強張らせたまま、お母さんの前にひざまずくと、ふくらはぎを揉み始めた……それはまるで、旅行の時私にしてくれた様に。
「あ~気持ちいい」
お母さんが敦史の頭を撫でる。
「……やめろ」
敦史が小さく言う。でもお母さんは、敦史を愛おしむ様に撫で続けた。
「やめろって言ってんだろ!」
手を振り払われたお母さんが異様な眼差しを私に向けた。
最初のコメントを投稿しよう!