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私は涙を隠すように、布団を被る。
「気分は? 大丈夫?」
「うん…」
「後で食べなさい」
サイドテーブルにおかゆと飲み物を運んでくれた。
「この間の男の子――薄井くんが、タクシーで連れてきてくれたの。彼、ずっと謝っていたわ。もうあなたには会わないって」
布団で顔を覆うと涙が溢れ出す――。
「加世子は、彼のことが好きなの?」
布団の中で涙声で頷く。
「そう……加世子が好きになった子なら、きっと素敵ないい子ね」
お母さんは静かに部屋を出て行った。
『私、過去の敦史がどんなだろうと気にしないよ。
私が知ってる目の前に居る敦史が好きだから』
前に美咲にそう言った――心からそう思ったんだ。それが、私の本心だった。
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