11.彼の闇

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 洋史君と別れ、家路につきながら、ぼんやりと敦史と過ごした時間を思い出す。 『早く家を出たいんだ』  高一の夏休み、図書委員の作業中に敦史はそう呟いた――。  お母さんの話しを一切しなかったのも、女が香水をつけるのがキライと言ったのも、母親を求める少年の映画をつまらないと途中で席を立ったのも、たまに見せた、イラついた表情や、寂しそうな顔も――腑に落ちなかった出来事全ての答えが分かり、自分の不甲斐無さに、涙が溢れ出た。  一番近くにいて、一番に敦史を見てきて、彼がずっと苦しみ悶えていたことに、何故、気づけなかったんだろう……私が少しでも寂しいと感じた時、敦史はいつだって側にいてくれたのに……。  家の前で見上げた空には、キレイな満月が浮かんでいた。 『離れていても、今、同じもの見てるじゃん――加世が俺を想ってる時、俺も加世を想ってるよ』  私は耐え切れず声を出して泣いた。 ーー私はずっと敦史を想っているよ。今敦史も、私のことを想ってくれてるの?  敦史、会いたいよ。
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