12.別離

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 敦史は、脈打つものが治まるまで、私の上で顔を伏せていた。  私はただ宙を見つめた―― 「妊娠したい……」  体を起こしかけた敦史が静止する―― 「子どもを授かったら……敦史を愛したかたちが、生まれて残るんだもんね」  顔を上げた敦史の顔はみるみる内に崩れ、敦史は嗚咽しながら、抜け殻のような私をだきしめた。 「ゴメン、加世――ゴメン……愛してる……愛してる!……ゴメン」  敦史は泣きながらきつく抱き締め続けた――
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