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翌日私は、自分の意思というより、心の奥の声に従うように、敦史の家へ向かう。
アパートの前で、お母さんに会ったらどうしようかと、近づくのを躊躇していた時、隣の部屋からゴミを持って出てきた中年の女性と目が合う。
思わず頭を下げると、体をコチラに向けた。
「敦史君ねぇ、昨日の夜遅くに、荷物運び出してったわよ」
「そう……ですか」
敦史の家のドアノブに手を掛けると、鍵は掛かってなくて、ゆっくりと開いた。
中に人の気配は無いーー台所やお母さんの部屋はそのままだったけど、開けられた戸の向こうの敦史の部屋に荷物が無い。
私はその光景を、ただぼんやり見つめた……。
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