12.別離

21/27

390人が本棚に入れています
本棚に追加
/399ページ
 翌日私は、自分の意思というより、心の奥の声に従うように、敦史の家へ向かう。  アパートの前で、お母さんに会ったらどうしようかと、近づくのを躊躇していた時、隣の部屋からゴミを持って出てきた中年の女性と目が合う。  思わず頭を下げると、体をコチラに向けた。 「敦史君ねぇ、昨日の夜遅くに、荷物運び出してったわよ」 「そう……ですか」  敦史の家のドアノブに手を掛けると、鍵は掛かってなくて、ゆっくりと開いた。  中に人の気配は無いーー台所やお母さんの部屋はそのままだったけど、開けられた戸の向こうの敦史の部屋に荷物が無い。  私はその光景を、ただぼんやり見つめた……。
/399ページ

最初のコメントを投稿しよう!

390人が本棚に入れています
本棚に追加