12.別離

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 昨日敦史はこの辺に投げたんだ。  細い溝と、雑草が生茂った小さな空き地で、高い鉄柵を越えなければ線路には入らない。だから、溝に落ちたか、この空き地に落ちたはず……。  私は必死にら敦史との思い出を――敦史との繋がりを失いたくない一心で探し続けた。  途中、ポツリ、ポツリと雨が降ってきた時、 「何やってるの!」  振り向くと、傘をさした老女が立っていた。 「探し物なんです」 「なにをぉ?」 「ストラップ……携帯電話に付ける、キーホルダーみたいなものを」 「キーホルダー?」 「みたいな、はい」  老女が困った顔をする。 「ここ、私の土地なのよぉ」 「す、すみません」 「雨降ってるし、また今度にしたら?」 「……はい」  私は何も言えずに空き地から出ると、老女は傘を私にもさしてくれた。 「キーホルダー、見つけたらとって置くわ」 「ありがとうございます……。明日も来て、探していいですか?」  老女は困った顔ながらも、仕方ないというように、うんうん、と頷いた。
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