12.別離

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 浮いた枯れ木の枝に、見覚えのある形――用水路の中を濡れることなど気にせずに渡る。  そして、絡まった枝からほどいて手に乗せた。 「あぁ……」  涙がこみ上げる。シルバーのチャームは黒くくすんで、濡れていたけど、敦史のストラップだった。 「あらぁ、ねぇ! 危ないわぁ、やめてやめてー!」  見上げると老女が慌てた顔で覗き込んでいる。私はストラップを持って、地上へと上がった。 「なんて格好! ほんとに……」 「これ、見つかったんです」 「あら、良かったぁ」 「……あと、もう一つ」 「もう一つ?!」 「はい。明日、また探しに来ます」
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