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『ねぇ加世……忘れた方がいいんじゃない?』
「え……」
『私も、陽ちゃんのこと忘れたもん』
「あ……聞いた? 結婚のこと」
『加世も知ってたんだ』
「偶然、陽介さんに会って……」
美咲がため息をつく。
『私も、もう他に居るの。ーー加世も過去に生きていないで、前を向いた方がいいんじゃない?』
「……」
その時、電話の向こうで美咲の名前を呼ぶ声。
『じゃあ、私仕事だから』
「うん」
電話は切れた。
敦史も美咲も陽介さんも、みんな新しい道を進んでいる。私ひとり、過去を生きているみたい……ひどい脱力感におそわれていた。
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