13.大学時代

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 天の川に隔てられた二つの星を見上げる。 「織姫と彦星は夫婦だって知ってた?」 「知らなかった」  ずっと恋人同士の話かと思っていた。 「二人は出会う前、はた織と牛飼いの仕事をまじめにやっていたんだけど、引き合わされた途端、相手に夢中になり過ぎて、それぞれの仕事を全くしなくなってしまったんだ。そのせいで、離れ離れにされてしまって、年に一度だけ、七夕の日にだけ会うことが許されたんだって」 「へぇ……」  大好きな相手と、一年に一度だけしか会えなくてもずっとお互いを想い合い、会える日を待ち望む二つの星を、少し羨ましい気持ちで見上げた。 「寒くない?」 「ちょっと、冷えてきたね」  佐藤君がパーカーを脱いで、Tシャツ一枚の私の肩にかけてくれた。 「ありがとう……佐藤君の彼女になった子は幸せだね」  今までずっと、佐藤君を見てきての本心だ。佐藤君が私の顔を見て、また目線を外す。
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