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発車を知らせるアナウンスが流れる。階段を降りる途中で、電車に乗り込む敦史が見えて、私はストラップを握りしめて駆け下りた。
「敦史!」
声に振り向いた敦史が、私を気付いてドアの方に戻ってくる。
「見つけたの!」
閉まりかけたドアの隙間から、紙袋ごと、ストラップを投げ入れた。
敦史はそれを拾うと、閉まったドアを挟んで私を見つめた。
ときめく程に男らしくなった敦史がいた――キラキラと輝く瞳が、少し潤んでいるように見えた。
私は溢れ出す涙をぬぐい、精一杯笑ってみせた。
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