†第1話†

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 無限大に広がる空と果てしなく深い海はまるで鏡同士で、互いを知ることは決してない。だけど、二つとも汚れなく蒼く澄んでいる。  こんな当然なことを、一体何回繰り返し想像してきたのだろう。  天にあるものは、地にあるものに干渉してはいけないし、地にあるものは、天にあるものに干渉してはいけない。  それは、俺には羨ましく思う。互いに何も知らないほうが幸せな時だってあるから。  海に囲まれた水の都『ネクエス』。そこらにあるでっかい大陸なんかより極めて小さい島だけど、水の都は、それと比でないくらい立派な城下町だ。  そこにそびえる城『ネフィール』が、俺の家。俗に言う王子様というのに、俺は当てはまる。  ちなみに今、俺はお忍びの…ゴホン。気分転換に散歩中だ。  俺の現在地は、ネクエスの港にある小型船の上。そこから遠くまでの水平線を眺めていた。  ひとつの世界しかないところに閉じこもりたくないだけ。ただ、そんだけの為に俺はここにいる。
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