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「わたしの…?」
いや、反応する部分が違うと思う。そんな心の声が届くはずもなく、二人は言い争いを始め出す。
「優くんはあんたのじゃないでしょ!」
「わたしのだよ! だってわたし、優のお嫁さんだもん!」
「優くんはまだ結婚できないわよ!」
「でもお嫁さんだもん!」
暫く不毛な争いが続く。聞いてるのもめんどくさくなってきて、小さく溜め息を吐いた。身体を床に這わせて、二人の足元を移動。ドアが開いていたリビングに入って、立って埃を払った。
「まだやってやがる」
いい加減気付かないものか。ま、いんだけどさ。
「おはよう、ゆき」
「しまっ――」
振り返った途端に、視界に天井が映る。俺を背負い投げした状態のまま、女の人は微笑んだ。
「後ろを取られたらダメだろう?」
「……朝から警戒しないって」
「いつなにが起きるかわからないこのご時世だ。身内に殺し屋がいるかもしれないぞ」
流石にそれはない。
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