86人が本棚に入れています
本棚に追加
(今思えば全ての発端はここからだった・・・・・・。変化の無い味気ない毎日で唯一、大きな、とても大きな変化だった)
S県某所のとある高校――
「今日の授業はここまでだ。それじゃあ皆、気をつけて帰れよ!!」
いつもと変わらない日常だった・・・・・・。毎日午後3時40分にHRを済ませ、教室の掃除をして、いつもの帰り道を通り、後は受験勉強して寝る。そして朝になって――
そんな変わらない毎日の連鎖。それを気に食わぬように捉えるのは俺だけだった気がする・・・・・・。
「おい、雄!!一緒に帰らないか!?」
「いや、いいよ。じゃあな」
いつものようにクラスの男子の誘いを断り、一人ゆっくりとした時間を歩きながら過ごす。
それが元俺、『神谷雄』の日課であり、楽しみの一つであった。
いつものように神社の境内の前を通り、ゆっくりと家に帰っていく。
その時は冬の為、4時になると既に空は茜色に染まり、夕日の明かりが黒い詰襟学生服を仄かな橙色で彩っていた。
(はぁ、帰ったらまた勉強か・・・・・・。まぁそれもあと少しだけどな)
そう自分に言い聞かせ、雄は心の中に存在するもどかしい感情を圧し殺した。そしてそれは遂に始まった――
神社の境内を通りすぎ、団地に向かう坂道の前に出たとき、ふと雄はある違和感を覚えた。
いきなり頭の中がぐらつき、それが激しい頭痛になる。
今までこれといって大きな病気を患ったことは無いし、学校の健康診断でも異常なしだった。
「い、痛い・・・・・・頭が、ワレル!!」
頭を抱えながら何処かの家に助けを求めようとふらつく足を動かそうとした。
しかし数分もすれば体全身が動かなくなり、声すら出せなくなった。
最初のコメントを投稿しよう!