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陽介は、短くため息をついた。
「加世子の異動話しと、俺の転勤話し……ついでに、朝のアラームとかもさ……とことん、邪魔されてんな、って思ったよ――」
「……」
「そんな自然の流れには逆らえないって感じたよ。
――強引に我を通して、失敗した過去があるからかな……フフ、年のせいかもな?」
陽介がゆっくりと目を上げ、真っすぐに加世子を見つめる。
「加世子――了解」
陽介の優しい眼差しに、加世子の唇が震え、涙がポロポロと溢れ出る。
本当に、いいの?陽介から離れてしまっていいのだろうか……加世子には正直分からなかった。
ただ、自分の中に芽生えた、仕事に対する小さな欲だけが、加世子の中で明確なものだった。
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