抱きしめたい

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『じゃあこれの赤にします。古いのは買い取ってください』 『音羽さん、偶然だね』と俺は声をかけた 『藤臣君…こんにちは。パソコン買うの?』 『うん、近々…俺もそろそろブルーレイのにしようと思って』 香住は少し恥ずかしそうに、俯き加減で喋った 『身体、大丈夫?』 『ありがとう…もう大丈夫だから…』 いつもより小さな声だが、この前みたいな事はなさそうだ 彼女は買ったパソコンを受け取ると、俺に頭を下げて店を出ていった 普通の女だった 長い髪をゆるくおさげにして、私服は花柄の可愛いサンドレスだった はっきりいってドキドキした。あんなの街でうろうろしてたらナンパされるだろう 思わず俺も店を出て、彼女を探した 案の定声をかけられてたが、会社にいるときの口調ではっきり断っていた 香住の後ろ姿は、人魚のようだった。長いドレスが足先で優雅に揺れる 街が深海に見え、青空が海の上に思えた
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