抱きしめたい

5/10
1209人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
カゴの中で小猫が鳴く。片手にはゲージやら餌やら、トイレをさげて、やっとマンションについた カゴからだすと、元気よく遊びだす猫 ゲージを組み立て、トイレを取り付けた 餌をガツガツ食うコイツが可愛かった オスだというので名前を『ナツオ』とつけた。漢字で書いたら夏男 あまりセンスない名前だけど、気にはいってもらえたようだ 『ナツオ』と呼ぶと返事する 真由子は猫アレルギーだったから飼えなかった。これも別れた特典だと思いこめばいい そうやって男と女ってのはお互いを忘れていくもんなんだ… 不意に携帯が鳴った 『もしもし…音羽だけど…』 『あれ?よく電話番号わかったね』 『部署のみんなの番号は入れてるから。猫、可愛い?名前つけた?』 香住は少し無邪気に聞いてきた 『可愛いよ、餌もよく食べるしよく遊ぶ。名前はナツオにした』 『可愛い名前ね、あのさ…いつかはその子飼おうと思ってたの。藤臣君に先越されたわね。可愛がってあげて。電話ごめんなさい』 『音羽さん!あの…たまにみにきたらいいよ…俺かまわないから』 『いいの?』 『うん…いいよ。きっとナツオも音羽さんの顔覚えてるし…喜ぶと思う』 『ありがとう』 俺…何言ってんだ?自分の部屋に大嫌いな女誘うなんて でも電話の声のトーンはすごく柔らかくて、いつものきつさは全然なかった そうだ…あの時の電話してたときのような感じ
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!