津藤くんと不幸な高二の始まり

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摂町にすむ低収入者の懐に優しいアパート。 『都武礼荘』 別名、潰れ荘。 貧乏で仕方ない俺たち兄妹にとって救いの神的アパートだった。 「ていうか出オチだなー」 「顔真っ青ですよ兄さん」 「妹よ、そう言うオマエもな」 轟轟と燃え盛る炎がアパートを包み込んでいる。 俺たち兄妹はそんな感じで消えてゆく家を前で眺めていた。 津藤兄妹は家を失った。 「なんか大家さんがたき火でマシュマロをトロリとしようとしたのが原因らしいですよ兄さん」 妹が言う。 まったくまったく大家さん、なんという迷惑千万だよ! 「…………」 まあ、考えはしたが口に出す余裕はなかった。 正直キツイ。 家が焼けた(全焼)というのは働いている大人でも力無く崩れ落ちるほどの出来事だというのに、俺たちは高二と中三の二人っきりなのだ。 「……そっか。しかし妹よ、出掛けててよかったよな」 せめてもの救いは、学校からの帰りだったので唯一の良い服の制服が無事なのと、家にもともと家具が何一つ無かった事だろう。 「悲しいですよ兄さん」 「何だか目頭が熱くなってきたよ」
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