津藤くんと不幸な高二の始まり

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「亀はもともと飼ってないだろおぅがぁあ!!」 「動揺して怒る所間違ってますよ」 考古学者である父は数年前にこの‘常盤学園’に俺たち兄妹を通わせ、当人は世界中を飛び回っている。 学費は払ってくれたが生活費は雀の涙ほどしか送ってくれていなかった。 しかしそれでも無いよりマシ、だった。 「面白い具合に望みぶった切られましたね、兄さん」 この新事実に顔色一つ変えずさらりと言う妹。 何という無関心さ…!?いや、違うな。これは…。 こっちもなるたけ平静を装って探りを入れてみる。 「ポーカーフェース決め込んでる妹よ、お前も望みぶった切られてるんだけど…」 「…………………………………………フッ…」 これだけハッキリと事実を伝えたのにも関わらず妹はポーカーフェース。 妹は鼻で笑い、眼鏡の位置を直し…もう一度直し…更に直し…直し…直し… 「知っています?兄さん」 直す手を止める。 「私無敵ですよ」 妹は自己嫌悪に襲われた。 耳まで真っ赤にして…やはり動揺を隠しきれなかったようだ。 しかしながら流石に‘鉄面皮の能面会長’。 伊達や酔狂にこんな呼び方をされているわけじゃあない。 無表情である。 ばってん(何故方言が出たのかはわからないし、俺はその地方出身ではない)……しかし、唇を尖らせ俯き、それはさも照れている、様に見える。まぁ無表情なんだけど。 長年を共に過ごした兄妹であるからこそわかる、顔色じゃあない微妙な表情の変化。 可愛いなぁ畜生!抱きしめてちゅーしてやろうかこのやろう! 何だこの……むらむらと込み上げる感情は!? 「なんて考えてる場合じゃなねぇー…」 俺は自己嫌悪に襲われた。
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