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泣く真似をする目の前の男に、車の後方から声がかけられる。
連れいるんじゃん。
ってか、やっぱナンパなのね、名乗んないし。
「結人、ちょっとこっち来い」
──ゆ…いと…?
今、結人って言った?
それは元カレの名前……
え?アキ?深町…アキ…なんだっけ…
私が名前をビミョーに思い出し考えてる真横で、2人が話してる声が聞こえるけど耳には入ってこない。
元カレの名前は春永結人(ハルナガユイト)。
んで、その友達の名前は深町(フカマチ)あき……
そこまで思い出してるのに!
「結人、彬人(アキヒト)くん、何してるの?」
ハッとなった。
私、今何してる?
女の人の声に急に現実に戻った。
結人はもう8年も前に別れた彼氏。
深町くんとも結人と別れてから会っていない。
今さら、私には関係ない。
「葉摘(ハツミ)、ちょっと待ってろ」
「結人?」
「深町くん、私行くから」
とりあえず、なんかここにいたくないんです。
まぁ、平気な顔して元カレに会えるなんて、ただ肝が据わってないだけですけど。
「待て、琴葉」
ガチャッとドアが開けられた?
何してくれちゃってんの、この人!
私、正に今車動かそうとしてたんだよ!?
お弁当ゆっくり食べれるとこ探すために。
「ちょっ、私もう行くから放して」
「イヤイヤ琴葉さん、ちょっと降りてきなさい」
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