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ママの目がうるんでいた。
ぼくは「ちょっと」胸をつかれた。
「無理に行くことはないんですが。。。」
「いったい何の『集まり』なの?『字音群』って?」
「SFファンのソーシャル・ネットなんです」
「エスエフって、あの、薩長のイモが、公方様に勝っちゃったなんていうメチャクチャ書く、アレのこと?」
「あっ!『江戸城の男(※1)』だね。ママ読んだの?」
ママは少し「バツ」のわるそうな顔をした。
「江戸城の男」は、十辺舎一九(※2)の流れを組む、不入符家出九(ふいりぷけ・でっく)(※3)という「戯作者」の書いた小説だ。
戊申戦争の「勝敗」が逆になった世界を描いている。
SFファンのぼくは面白く読んだが、公方様に弓ひくような描写にはさすがに、好感がもてなかった。
「あれは発禁だろう?」
「そうですね。天領では」
「確か、作者は『手鎖(※4)』になったのよね」
「あんなことを書いたのに『手鎖』だけとは、お上の慈悲にもほどがある。薩摩に『亡命』して、印税で『高い城』(※5)を築いてノウノウと天寿をまっとうしたそうじゃないか!あいつも西の出身だろう?」
「SFを書く作家は、西の方の方が多いみたいですね」
「そうだ。そうだろうとも。あんなデタラメを書くのは『関西人』に決まっている。阪神の応援団と同じだ。関ヶ原、戊申以来の怨念のエネルギーだ。君」
傷だらけの、顔をグッと近づけた。
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