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再びハラハラと大粒の涙を流した。
「掛布め。チバラギ族めが!裏切り者!」
男は、そう吐き捨てるように言うと、「うう」と泣きくずれた。
「掛布・・・・って?」
「昔の阪神のスター選手よ」
「え、ええ。名前だけは知ってます。今は、解説者ですよね」
「昭和60年だったかしら?21年ぶりの優勝とかで、大騒ぎになった年の、阪神の中心選手」
「掛布・バース・岡田・・・三連続ホームランとかいう伝説聞いたことあります」
「先生は、生まれてた?」
「いや。。。まだ生まれてないです」
「・・・時間が経つのは早いわねえ」
遠い目になった。
「疑ったりしてすなまかった。悪気はないんだ。どうかゆるしてくれたまえ」
男は、若輩のぼくに、率直に頭を下げた。
どうやら「いい人」らしい。
「横浜★」ファンに「悪い人」のいようはずもない。
「それにしてもいまだに『掛布』を恨んでるなんて、よっぽど阪神が嫌いなんだねえ」
ママが客に言った。
「何かよほど嫌な記憶をお持ちですね」
ぼくも訊いた。
「話してみない?」
ママが言った。
「あたしも先生も、横浜ファンだし、阪神なんて『だ~い嫌い』なんだから」
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