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「おれがまだ先生より、少し上くらいの年齢だったときのことだ。
その頃おれは、亡くなった父親の跡をついで、宝石を商う商売をやっていた。
大阪の枚方市というところに、出張した。
一泊した後、二日目の午後に半日ほど暇が出来た。
奈良を見物してみる気になった。
京都は「剣呑(けんのん)だからね。
京阪神・奈良などというのは、こっちの人間は、銀座・新宿・六本木くらいの距離でくっついていると思っているが、いやどうして実際行ってみると、とんでもなく遠い。
なんでもっと「見物」しやすいように、コンパクトにレイアウトしないのか、「腹が立つ」くらいだ。
二時間ほど走ってようやく着いたが、女の子を連れているわけでもなし、「寺」ばかり観ても仕方ないので、いい加減なところで切り上げて帰ることにした。
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