0人が本棚に入れています
本棚に追加
中途まできて、燃料計(ヒューエルゲージ)が、空(E)に近いのに気づいた。奈良も枚方も街中ガソリンスタンドだらけだというのに、「いざ」となると「どこ」にも見当たらない。
「いざ」は鎌倉に限る(※1)。
そのうち警告灯(わーにング・ランプ)が点(つ)いた。
当時、生憎(あいにく)と車をかえたばかりだった。
年間4万キロは、乗っていたから、燃費のいい「カムリ」(※2)のディーゼル・ターボ車に代えたのだ。
当時は、ハイブリットだのEVだのは、まだなかったからね。
だが、ガソリン・エンジンと違って、ディーゼルは、一度燃料きれを起こすと「エア抜き」という修理をしなくてはならん。手間も金もいる。
周囲はどんどん暗くなる。
人家もない。
いささか心細くなり、「焦り」を感じ始めた。
まわりを見ているうちに、もうとっぷり暮れて黒い肌をさらす山の中腹に、集落らしい光の連なりがあるのに気づいた。
わりと近くに感じられた。
国道なんだから、そのまま走ったって、ガソリンスタンドくらいあるに決まっている。
それなのに・・・
今となっては「なぜ」そんな「ばか」な真似をしたのか分らないのだが、光の方向へ行くらしい間道へつい折れた。
「魔」に魅入られた、としかいいようがない。
最初のコメントを投稿しよう!