第三章  不愉快なGS〓

3/6
前へ
/46ページ
次へ
 中途まできて、燃料計(ヒューエルゲージ)が、空(E)に近いのに気づいた。奈良も枚方も街中ガソリンスタンドだらけだというのに、「いざ」となると「どこ」にも見当たらない。 「いざ」は鎌倉に限る(※1)。 そのうち警告灯(わーにング・ランプ)が点(つ)いた。 当時、生憎(あいにく)と車をかえたばかりだった。 年間4万キロは、乗っていたから、燃費のいい「カムリ」(※2)のディーゼル・ターボ車に代えたのだ。  当時は、ハイブリットだのEVだのは、まだなかったからね。  だが、ガソリン・エンジンと違って、ディーゼルは、一度燃料きれを起こすと「エア抜き」という修理をしなくてはならん。手間も金もいる。  周囲はどんどん暗くなる。  人家もない。  いささか心細くなり、「焦り」を感じ始めた。  まわりを見ているうちに、もうとっぷり暮れて黒い肌をさらす山の中腹に、集落らしい光の連なりがあるのに気づいた。    わりと近くに感じられた。  国道なんだから、そのまま走ったって、ガソリンスタンドくらいあるに決まっている。    それなのに・・・  今となっては「なぜ」そんな「ばか」な真似をしたのか分らないのだが、光の方向へ行くらしい間道へつい折れた。 「魔」に魅入られた、としかいいようがない。       
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加