第三章  不愉快なGS〓

4/6
前へ
/46ページ
次へ
 標識の下には「大賀須村」と、記されていた。 「オオガス村」か。  村とは頼りないが、ガソリンスタンドくらいはあるだろう。  もしなくても、ディーゼルは灯油でも走る。  灯油くらいなら、売っているだろう。  そんなことを考えながら15分ばかり走ると川があり、箸を渡るとどうやらそこが、「村」らしかった。    灯りの点いた人家が見え始めた。  さすがに「ほっ」とした。  ちいさなスーパーマーケット風の「雑貨屋」(※3)があり、その先にガソリンスタンドが見えた。  道がもう一本同じくらいの幅の道にぶつかりT字路になっているところにそれはあった。    スタンドにはいった。  普通はすぐにサービスマンがとんでくる(※4)ものだが、誰も出てこない。  ホーンを鳴らして車から降りた。  事務所のドアが開き、まるい体の男がゆっくり歩いてきた。  カンミ(※5)とオカダ(※6)を足して3で割ったような顔をしている。 『軽油だ』  と、おれは声をかけた。  サービスマンは、それに応えず、おれの車を見ながらまわりをグルリと一周した。 『横浜ナンバーでっか。珍しおまんなあ』  ニタリと笑って、サービスマンが言った。 『燃料を切らしちまった。軽油を満タンで頼むよ』  おれはイライラして言った。 『横浜ねえ・・・』  サービスマンが、わざと焦(じ)らすような、ゆっくりした口調で言った。 『ほんまに珍しいわ』
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加