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標識の下には「大賀須村」と、記されていた。
「オオガス村」か。
村とは頼りないが、ガソリンスタンドくらいはあるだろう。
もしなくても、ディーゼルは灯油でも走る。
灯油くらいなら、売っているだろう。
そんなことを考えながら15分ばかり走ると川があり、箸を渡るとどうやらそこが、「村」らしかった。
灯りの点いた人家が見え始めた。
さすがに「ほっ」とした。
ちいさなスーパーマーケット風の「雑貨屋」(※3)があり、その先にガソリンスタンドが見えた。
道がもう一本同じくらいの幅の道にぶつかりT字路になっているところにそれはあった。
スタンドにはいった。
普通はすぐにサービスマンがとんでくる(※4)ものだが、誰も出てこない。
ホーンを鳴らして車から降りた。
事務所のドアが開き、まるい体の男がゆっくり歩いてきた。
カンミ(※5)とオカダ(※6)を足して3で割ったような顔をしている。
『軽油だ』
と、おれは声をかけた。
サービスマンは、それに応えず、おれの車を見ながらまわりをグルリと一周した。
『横浜ナンバーでっか。珍しおまんなあ』
ニタリと笑って、サービスマンが言った。
『燃料を切らしちまった。軽油を満タンで頼むよ』
おれはイライラして言った。
『横浜ねえ・・・』
サービスマンが、わざと焦(じ)らすような、ゆっくりした口調で言った。
『ほんまに珍しいわ』
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