序章  大魚(おおいお)〓

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「根っからのベイスターズ・ファン」ばかりの、店の常連は、今日あたりスタジアムで応援だろう。 「塾」の講師なんていう仕事をしているぼくは、平日は夜9時過ぎまで仕事をしているので、日曜くらいしか、「試合」を観にいくことができないが。    客は、ぼくとテレビをくい入るように観ている「男」の二人しかいなかった。  試合は、横浜の「惜敗」で終わった。 「阪神」強力打線にボカスカ打たれずにすんだだけでも、よかった。 「善戦」というモノだ。  いつもなら、こういうときは、 「悔しい!」  と、叫ぶはずの、ママが黙っていた。  カウンターの、ぼくの、ひとつ空けて隣にすわっている男を、「気を呑(の)まれてしまったように、みつめていた。  ぼくも驚いた。  男は、「ハラハラ」と涙を落としているのだ。  初めて見かけた「客」だ。           が、よほどの「横浜★」ファンだろう。  さっきまで、 「いつかベイが『優勝〓』」   したら 「提灯行列をして、一晩中騒ごう」  と、ママと話していたくらいで、ぼくも「人後」に落ちぬ「ベイスターズ」のファンである。
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