第一章  奇妙な男😡

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「残念ですね」  と、思わず、その男に声をかけた。 「『残念ですね』だって」  言いながら、男が「こちら」を向いた。  大きく「かぶり」を振って、続けた。 「残念なんて、そんな『ヤワ』な言葉じゃ、言い表せないよ!」  ぼくは、「ギョッ😢」とした。  男の痩せてとがった顔には、あちらにもこちらにも「傷跡」がある。  その顔を興奮でひきつらせている😡。  年齢(とし)は、50の半ばくらいだろうか? 「やくざ」には見えなかったが、「妙なやつ」に声をかけてしまったと、ちょっと「後悔」した。 「あいつらは、いったい何だ」  客は、試合終了後も騒ぎ続ける「阪神ファン」を映すテレビを指さした。 「ひどいヤツらだ。社会の迷惑、エイズ並だ」  はきすてるように言った。  口をとがらせた表情は、割と「愛敬(あいきよう)」がある。  ぼくは少し「ほっ」として、 「ティーズでしょう。AじゃなくTの複数形」  と、つまらない「ジョーク」を言ってみた。 「正確ね。さすがに『塾』の先生。でも、そういう学問的なことを言うと、嫌われるわ」  ママが「へん」に「おふくろ」ぶって、トンチンカンな窘(たしな)め方をしてから客に、 「お兄さん。いいこというわ」  と、うなずいてみせた。 「タイガースのファンは、常軌を逸しているわ。  荒川、江戸川沿いに『万里の長城』を築いて、『チバラギ族』『ダサイ族』の侵入を食い止めて欲しいって、県や都に陳情(ちんじょう)してるってのに。。。。 『長城』が出来たって、これじゃあ、蛮風を防げないわ。  箱根に『お関所』と『税関』も設(もう)けてもらって、厳しく取り締まってもらえるようにしなくちゃだめね」 「それくらいじゃダメだ!」  男が大声で叫んだ。 「『チバラギ族』『ダサイ族』は、蛮族といえど、横浜・東京への『憧(あこが)れ』を持っている。  暴れるのは『コンプレックス』の裏返しといってもよい。  いわば、『熟蕃(じゅくばん)』だ。  し、しかし」    客は「ブルッ」と体をふるわせ、周囲を見回して声を低めた。
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