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時間はもう7時を回る頃であろうか。
空には雨上がりの綺麗な一番星が瞬いていた。
そこへ校舎裏から今1人の男が出てきた。
腕捲りしたシャツの端には真っ赤な血がついている。
それは不良達から『デブ太』と呼ばれ虐められていた小太りの男だ。
その顔は歪んだ笑みを浮かべながら、どこか恍惚の表情をしている。
そしてその口は小刻みに震えながら何かの音を発していた。
それは余りにも小さく、近くに行き耳をそばだてなくては聞き取れない程だ。
彼は誰に聞かせるわけでもなく、只々、丸で呪文の様に同じ言葉を呟いていた。
「和樹君、君達がやろうとしていたコウサカさんは僕が必ずやっつけて上げるよ…イヒ。僕がこんなに苦しんだのも皆皆ぜ~んぶコウサカさんの所為だからね。くすくすくすくすくすくすくすくす。だから、ゆっくりお休みなさい。くすくすくすくすくすくすくすくす………」
まだ本調子ではない月明かりは、彼の顔に不気味な陰影を与えて輝いていた。
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