千里眼

２章

青年が、千ちゃんは違う道でいったに違いない！と華麗に推理し始めた所に、そのお目当ての少女が目前を隼の如き速さで疾走していく。

「あっ…千ちゃ……」

と青年が名前を呼び終わらない内に少女は視界からフェードアウト。

「……ん、おはよ…う…」

言葉の掛ける相手を見失った青年の挨拶はその場にいた野良猫に掛けられた。

そんな青年を悲哀の混じった眼で見上げる野良猫。

青年は煙草の作用に依る物なのか、気持ちが沈んでいくのを感じていた。

やがて表情を引き締めた青年は、ゆっくりと千の走り去っていった方角に顔を向ける。

「ふっ、どうやら気付かれなかったみたいだな。尾行成功だ！」

青年の強がりに、野良猫は更なる悲哀の視線を向けていた。