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千夏は昨日の制服姿とは違い、白地のキャミソールと短いジーンズとラフだがお洒落な格好だった。
「乗り気じゃなかったってのに三十分前に来るなんて意外と律儀じゃん」
「……まぁ、な」
普通に話しかけて来る。
余計でいかにも物騒そうなオマケが二人もいなければ、自然だろう。
ナンパ男二人は不自然なほど日に焼けており、サーファーという感じだ。
これで爽やかな雰囲気ならスポーツマンに見えるのだろうが、派手な装飾品の数々が下卑た雰囲気を醸し出していた。
「おい、コラ。無視すんなや――」
「実はあんたも楽しみだったんじゃないの? 出掛けるの」
千夏はものの見事にナンパ男をスルーしていた。
「……お前も早い、な」
令士もこの二人を無視した。
何故かは不明だが、この場は千夏に合わせておくのが得策だと判断したのだ。
令士まで自分たちを無視し始めたのを見て二人が驚愕の表情を浮かべていた。
第三者が見れば不思議な光景だっただろう。
令士がナンパされている千夏が目の前の男二人を完全に無視しながら話しかけてきたのですら不思議な光景だったのだ。
そこに自分まで二人を無視して会話をしていれば、この男二人は何なんだとなる。
令士も何なんだと思う。
「じゃあ、少し早いけど行きましょうか」
「俺は結局どこまで行くのかは聞かされていないんだが?」
「大丈夫。私に任せて――」
そこでやっと二人がキレた。
「――テメェら、ざけてんのかぁ!?」
「俺らを完全シカトなんていい度胸じゃないかよ、ちょっと面貸せや」
一人が千夏の腕を掴み、もう一人は令士の胸ぐらを掴んできた。
(さて、どうするべきか)
こんな状況でもは令士は不思議と冷静だった。
なんとなくだが、大丈夫な気がしたのだ。
「――気安く触るな」
真夏なのに、寒気を感じさせる声がした。
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