『始まりは唐突に』

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「フフン、たかが扉ごときが私の邪魔をしようなんて愚かだったのよ」 着地した姿勢――両足を広げ角度によっては下着が丸見えのポーズ――のまま少女は勝ち誇った。 ちなみに令士の位置からは丸見えだったりする。 「……誰だ?」 他にも色々とツッコミたかったが、令士が口にしたのはそれだった。 少なくとも、令士の知り合いではない。 「――――ッ!! もしかして、ずっとそこにいた?」 コクン 少女の問いに令士は頷いて肯定する。 「もしかして、丸見えだったりする?」 ――コクン やや間をおいてから頷く令士。 と、ここでようやく少女は普通に立った。 やや俯いているので令士から表情は確認出来ないが、 (緑のスカーフ――同じ二年生か?) この高校では、学年別に制服の一部の色が分かれている。 一年生は青。 二年生は緑。 三年生は赤。 男子生徒は制服の裾と袖のラインが。女子生徒は胸元のスカーフとスカートのラインがそれぞれ学年別の色となっている。 決して友人が多くない令士。交遊関係が限定されるその中に目の前の少女はいない。 「――――なさいよ」 「はい?」 少女の呟きは、小さくて令士には聞こえなかった。 「いるならいるって言いなさいよ、そして開けなさいよ!!」 顔をやや赤らめながら無茶苦茶なことを言ってきた。 何だ何だ。 この状況はどういう事だ? 確かに立ち入り禁止の場所にいた自分は非難されるべきだが、何故その事以外で非難される。 混乱する令士。 尚もドアを開けなかったことを非難し続ける少女。 ――――そして二人はとても大切なことを忘れていた。
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