『始まりは唐突に』

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『な、なんだ今の音は!!』 その声に二人揃って固まる。 そう、現在校内では補習の真っ最中。 教師は大絶賛校内にいるのだ。 あれだけ大きな破壊音に気付かない方がおかしい。 「ヤバい、見つかったら厄介ね。ったく、あんたが開けないからよ」 「有無を言わさずぶっ壊した奴が責任を押し付けるな。100%お前の責任――ってそんな暇はない」 逃げ道は一つ――出入り口しかない。 「あんた馬鹿ね。そこは一本道。途中で教師と鉢合わせよ」 「じゃあ隠れろってのか? 隠れる場所なんてほとんどないこのだだっ広い屋上で」 「っとに常識的なんだから。ちょっとこっちに来なさい」 手を掴まれるなり自分よりも二回り以上も小さい体格からとは思えない力で引っ張られる。 間近で見ると十分美少女だった。 肩の後ろまで伸びた黒髪は綺麗に切り揃えられ、顔立ちも良い。 (――何だ? この破天荒で慇懃無礼で怪力な女は!?) その正体不明の少女に連れてこられたのは――屋上の角。目の前にあるのは金網のフェンス。 行き止まりだ。 「お、おい、ここは行き止まり――」 「この先に脱出口があんのよ!!」 強制的にフェンスを乗り越えさせられる。 ま、さ、か―― 「目の前にデッカい木があるでしょ? あれの太い枝に向かって飛びなさい」 「…………は?」 「あれがこの状況から脱出する唯一の脱出口。男なら迷わずに飛びなさい。運が良ければ無傷――あ、擦り傷は避けられないかで済むから」 選択権も拒否権も無かった。 本当に何で、こんな名前も知らない奴とこんなことに。
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