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「帰すつもりはないって…そもそもこの『アーク』で私は何をしたらいいの?」
くるりと見渡すとカフェのような内装の店内…決して私のセンスで揃えられたのではない色彩の家具が並んでいる。
「主に宣伝だな。色んなコミュの宣伝をして地道に金を稼ぎ、相手に宣伝して貰ってコミュの知名度を上げ会員を増やす」
「…でも、何をするところなのか分からないのに宣伝も何も…」
「茶ぁでもシバいときゃいいんだ。後は俺に尽くせ」
「は?朔夜さんに尽くして何の得が…」
目を丸くさせる私に相変わらず意地の悪い笑みを浮かべて…。
「こんないい男がいるコミュなら有名になるのは当たり前だろ?俺を着飾って俺に尽くせば悪いようにはしない」
「ぱ、パートナーだったらそんな損得なしでコミュのために尽くしなさいよ!なんで私が…ッ」
「やりたくもないオーナーとして俺に尽くさなきゃならないんだって?」
「!」
思ってもいないことをまるで言い当てたような得意気な面で見られてるのがまた気に入らない。
「『なりたくもないオーナー』ってネタ、引っ張りすぎですよ。朔夜さん」
「そうか?事実だろ?」
何でもないことのように呟かれると罪悪感よりも別な何かが込み上げる。
「やる気ないなら帰ってるし、どうしたらいいかのアドバイスなんて聞かないわ」
「……」
「やるとなったらやるわよ。やる気がないのは朔夜さんじゃ…」
「朔夜」
「は?人の話を途中で遮らないで…」
「朔夜でいい。武藤」
「……」
これは、気を許してくれているんだろうか。…いや、多分相手は私を名前呼びしないから完全に気を許してくれてる訳じゃないんだろう。
お手並み拝見…って奴かしら?
上等!
「朔夜!」
「あ?」
「始めるわよ!とりあえず掃除からね!!」
「お前がやるんだぞ。俺はしない…服が汚れるからな」
「~~ッじゃあ帰れ!役立たず~!!」
どうやら前途多難です。
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