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「なぁ、市子。今日飲みに行こうぜ!」
そう明るい声であたしに話しかけてきたのはヒデ、こと中須秀行。
あたしと一緒にこの会社に入ったいわゆる‘同期’って言うやつで。
「お、いいねぇ。花の金曜日だしね!今日はビール飲みたい気分だったんだ!いこいこ!」
「オマエさぁ・・二十代が花金とか言うなよ・・・とっくの昔に消え去った死語だぞ。死語。」
「うっさいな~。あんたはあたしの親父かっての。で、行くの?行かないの?どっちなの?」
「誘ったの、俺なんだけど・・・。」
毎週金曜日ともなれば彼は風のようにあたしの前に現れて、今のようにあたしの予定を聞かずに埋めていく。
新人研修の時に同じグループになって以来の仲間だけあって付き合いは相当長い。
あたしにしてみれば飲みに行ったって肩肘はらずに過ごせる数少ない大事な友達のうちの一人だ。
「あ。樹里ちゃんは?今日一緒に行くって言ってた?」
「あぁ、あいつはおデートだとよ。シングルの俺らをほっぽってさ。」
当然、花金ともなれば彼氏彼女持ち達のお泊りデートっていうのが当たり前な筈なんだけど・・・
「えーあの冴えない彼氏と金曜日まで一緒にいるってどうなのよ?」
「さぁ、俺にはわからん。」
「あたしにもわからん。」
「お前も早く男作れ。」
「そう思うなら花の金曜日潰さないでよ。」
生憎、今の所あたしにそういった予定は一切ない。
「いいじゃん。どうせ暇だろー?そんなお前に付き合ってやる俺ってすげーイイ奴!
そんじゃ、今日仕事終わったらいつものとこで!」
そう言うとヒデは用件だけすませた!
と言わんばかりに颯爽と企画部を後にする。
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