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「君、荒井由香さん?」
一瞬驚いた表情をしたが、すぐに訝しげな表情になりながら返事をしてくれた。
心の声が聞こえてきそう。
「そうです……けど」
あんた誰?なんでここにいんの?なんで私の名前知ってんの?
そう言われてもねぇ。
「あのね、まず、手紙の宛名はフルネームでしっかり書いた方が良いよ」
まだ、訝しげな顔をしている。
でも、次の一言には驚くはず。
「そしてね、鈴木なんて名前は世の中に沢山いるし、このクラスにも2人いるんだ」
あっ……。間違えた……?
そんな事を考えているんだろう。
さっきの驚いた顔に戻った。
「宛名に"鈴木先輩へ"としか書かれてなかったから、間違いだとは分かっていたけど、一応確認させてもらっちゃった。ごめんね」
今度は顔を赤くして、「すみませんでした」と小さく言って走って行ってしまった。
このクラスになって約二ヶ月。
届いた手紙は約10通。
その度にこんな感じに間違った人に教えている。
また、俺への八つ当たりな噂が飛び交うんだろうな。
亮、お前が来いよ。
面倒くさがる友の姿を頭に思い浮かべながら、鞄をからって教室を出た。
明日は下駄箱に手紙が入ってませんように。
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