日本人、佐山妖壱

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「未だになれねぇな、フランスの気候ってのは…。」 日本では夏くらいだろうか?と妖壱(ヨウイチ)は思った。 ぼろぼろのベッドでの朝、埃と湿気で息が詰まりそうになる。 町外れの物置小屋のような廃屋。それが妖壱達の住みかだ。 「おう、起きたかヨウイチ。 パンあるぞ。」 そう言いながらパンを差し出す20そこそこのこの男、名を『ジャン・ヤリーヌ』という。 「いや、いい。 食欲あんまないんだ。」 「いいから食っとけ。 何か腹に入れとかねぇと、とっさに動けなくなるぞ?」 「その時は、お前を身代わりにして逃げるさ。」 くっくと声を押さえて笑う二人。 久しぶりに笑った気がしたと妖壱は思った。
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