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佐山妖壱――
1938年に18歳で華の都パリに留学してから既に5年…。
彼は自由のために戦っていた。
自らの祖国である日本の同盟国ドイツと…。
「最近の奴等の動きはどうだ?」
「いや、静かなもんさ。
だが厄介な奴があらわれやがったよ。」
ジャンが声を低めて言う。
「厄介な奴?
誰だよそいつは…?」
妖壱が興味深そうに聞く。
「ゲシュタポは知ってるだろ?」
「あぁ、ドイツの秘密国家警察だろ?
共産主義者にユダヤ人、反ナチス分子に、それにみなされた人を排除する訳の分からねぇ奴等だな。」
「そう、そいつらだ。
…情報係のマルトから聞いた話なんだが、なんでもパリに新しいゲシュタポ隊員が来たらしい。
そいつは女らしいんだが、かのSS出身で、反ナチスと見なしたもんだけじゃなく、少しでもおかしな行動を起こした奴も牢屋にぶちこんで拷問するって話だ…。」
ジャンは青い顔をして妖壱にそう話す。
彼にも注意して欲しかったのだ。
しかし妖壱は恐れる様子一つなく、
「女かぁ…。
ドイツの女ってのは美人らしいから楽しみだな…。」
ジャンの願い虚しく、妖壱は完全に甘く見ていた。
「ヨウイチ、女は怖いぞ…?」
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