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「先生、お客様です」
柴田が室内に案内したのは、妙齢の女性だった。
黒く、艶やかな長い髪にビジネススーツを着た、細身の女性だ。 充分に美人と言える顔立ちだが、彼女の目や表情は、どこか違和感がある。
僅か数秒で、その違和感が彼女が笑っていないのに気付いた。
「貴女が所長さんなのかしら?」
毅然とした口調で女性は、確認をするような言葉を口にした。
「はい。所長兼探偵の相良綾女です。どうぞ、そちらにおかけ下さい」
綾女が椅子を勧めると、女性は、それに応じた。
そういった動作の1つにも、艶かしさがある。
「奥平雅よ。貴女に依頼があるの……探偵さん」
「はい。して、どのような依頼ですか?」
「…この人物についての調査よ」
奥平は、スーツの内ポケットから、一枚の写真を取り出し、テーブルに置いた。そこには、若い男性が写っている。
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