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「羽田恵介、普通のサラリーマンなのだけど……素行調査をお願い出来るかしら?」
彼女の話し方は、まるで、取引先とビジネスの話をするかの様だ。相良は、写真を手に取り眺めると、口を開いた。
「失礼ですが、彼との関係は?」
「親しい間柄とだけしか言わないわ。申し訳ないけど」
出された紅茶を一口、啜った後に奥平がそう言った。
相良は、数秒だけ沈黙し、奥平にいつもの微笑みを向ける。
「承りましょう」
最後まで、ニコリとも笑わない奥平は、自身の連絡先を相良に渡し、事務所を後にした。
彼女が街に消えていくのを、窓のブラインドの隙間を開け相良は眺めていた。
「親しい間柄か……相手は多分、奥平さんの恋人かな、ひょっとすると婚約者かもしれないな」
「どうして分かるんです?」
柴田がカップを片付けながら尋ねると、相良は、柴田の方を向く。
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